学会員リレーエッセイ イベント雑感 第2回

「イベントの力=『多事多縁』と『集団的創造』

岩崎 博 有限会社エスシー・プランニング・オフィス代表

学会員が、イベントまたはイベント学に関して日々思うことを提言していく『イベント雑感』。第2回目となる今回は、イベント学会会員で、有限会社エスシー・プランニング・オフィス代表の岩崎博氏より、「イベントが現在の私達の社会にもたらす力」について、寄稿していただきました――

かねがね「イベントとは目的を達成する手段である」との定義(?)には釈然としない思いを抱いてきました。
イベントは集団的な創造活動ですから、集団に動機を与え、行動への意志を束ねる「目的」が重要であることは自明です。何も「それは違っている」というつもりはありません。

しかし、「イベントは手段である」というのは、イベント固有の特性を何ら示してはいません。また、目的と手段というのは階層的な関係にある相対的な概念であり、本来イベントは手段であると同時に目的としての機能を内在しているはずです。
ここではこうした疑問から、イベントが現在の私達の社会にもたらす力について、私自身の思うところを述べます。

まずあげたいのはイベントの『縁』を起こす力です。私は個人がいまの社会を生き抜くキーワードとして『多事多縁』という言葉をよく使います。『縁』とは人が生きていくうえで欠かせない、「安心」と「希望」を支える人間の帰属関係のあり方を指すものです。地縁、血縁、職場縁といった全人格的な帰属集団の有効性が低下していくなかで、人は部分的な人格を帰属させる『多くの縁』をもつことで、「安心」と「希望」を、「日々の楽しみ」を得ようとしています。多くの新しい事に関われば多くの縁が生まれ、広がっていきます。

イベントという限定的な『事』に試みに参加するなかで新たな『縁』を広げる……。私はそこにイベントの一つの可能性をみています。コンベンション、パーティ、バザー、フリーマーケットなどの『縁起イベント』に注目です。  と同時に、こうしたイベントを評するにあたり、「手段なのか、目的か?」という二項対立の論点整理が、私には、なじまないのです。

次にいきます。私はイベントの基本的な特性は『集団性』にあり、「集団への帰属を共通感情として分かち合う」イベントの力に着目すべきと考えています。何らかの価値観や嗜好を同じくする『集団』が、価値観をシンボリックに表現した時間・空間(イベント)をライブに共有し、高揚する共通感情のなかで、自己と帰属集団との関係をお互いに発見しあうといったシナリオはイベントならではのものでしょう。

遠くは古代国家の祭礼、近くはナチスの党大会などにその証明を求めることができますが、その話はさておき、集団の共通感情をいかにマネージメントするかは、きわめて今日的で重要な課題と考えます。書店にはファシリテーションやコーチング、ネットワーキング、合意形成といった「グループマネージメント」に関連する書籍がたくさん並んでいます。
誕生パーティからスポーツ大会、企業行事、地域の祭、国際イベントにいたるまで、あるいはキャンペーンなどのマーケティング活動においても、「共通感情を分かち合うグループマネージメントとイベントの力」はますます重要な取組課題となっていくはずです。

イベントならではの『集団的創造』についてもひとこと述べます。創造活動というのは、あらかじめ決まった設計図にもとづく製作ではなく、制作に向かっているプロセスそのもののなかで湧きあがり、全体像が浮かび上がってくるという側面を強くもちます。少なくとも目的に向けた効率的生産活動とは異なります。創造活動とは不断の自己変革、自己創造であるともいえます。集団の自己変革を促すイベントの力に期待がかかります。

私はイベントにおけるマネージメントの要諦は、目的に向けて設計図どおりに合理的な判断を積み重ねるよりも、創造のプロセスを上手にコントロールすることと思っています。創造のプロセス(イベント準備)のなかで共感が生まれ、隠された本質の目的を発見することは珍しくありません。
集団の自己変革を促す集団的創造活動=イベントのマネージメントは、私の研究テーマです。詳細な内容は別の機会に。

以上、要点は「手段」といわれるイベントそのもの、あるいは制作プロセスに内在するイベントの豊かな魅力や可能性などの力、そしてプロセスそのものを重視するマネージメントの重要性と課題です。

昨年は、劇作家・評論家の山崎正和氏の『社交する人間』(中央公論社)が話題となり、私も大きな示唆を得ました。それからの引用で話を終えます。 「行動には目的と方法、目的と実現過程の二側面がある。そして前者が支配的であるときは功利的な行動が、後者が独立したときには遊戯的な行動が生じる。この遊戯的な行動が社交をもたらす」
この「社交」が具体的な形となったものが「イベント」と考えていいでしょう。

■Profile ■
岩崎 博(いわさき・ひろし)
有限会社エスシー・プランニング・オフィス代表。イベント学会会員、合意形成研究会会員。演劇〜雑誌〜イベント〜Webサイトと、表現のあり方は異なりますが、継続的に「集団的創造とプロセスマネージメント」を関心の対象にしています。今年は実践的な論議の場を広げていきたいと考えています。

 


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